もし前回の記事を読んでいただいてないようでしたら、一度読んでみてはいかがでしょうか。今回お話しすることがより伝わりやすくなるかと思います。それでは、少し復習しましょう。
「数学で大事なことは何か」の答えとして「解き方や問題パターンを暗記していること」や「答えが合っているかどうか」は大切ではありませんでしたね。
そこで前回は「子どもが自然と数学力を身につける子育て初級編①」として、
子どもに考えさせることの大切さをお話ししました。
何故それが大切だったのでしょう?
それは、数学という教科とは何かを知ることが必要であったからです。そのキーワードをまとめると以下の3つでした。
・①数学とは論理的思考を養う教科であることを知るべし。
・数学とは「考える教科」である。
・“数学力”=論理的思考力
この論理的思考力を鍛えるために、子どもに考えさせることが大切でしたね。しかし、それだけでは「数学という教科とは何か」は語れません。
“なぜ”を考えて自己解決して終了でしょうか?いいえ、違います。考えに考えて、答えを導いた後に「相手に説明する」というプロセスがありますよね。私の記事もそうです。自分の考えや答えを持っていても、それをみなさまに活用していただけなければ意味がありません。では活用していただくには何が必要なのか。それは、専門家ではない方々にも伝わる説明なのです。
そこで、子どもが自然と数学力を身につける子育て初級編②として
②数学とは説明力を養う教科であることを知るべし。
ですから、”数学力”の式は次のように発展します。
“数学力”=論理的思考力+説明力
今回はどのようにすれば説明力が身につくのかをお話しします。
では、その説明が実際に伝わるものかどうか試してみましょう。この図を見ていない人に描いてもらうよう頼んでみてください。どうでしょう?
同じような図を描いてもらえた方は説明力十分だと言えます!
なかなか思うように描いてもらえなかった方は、「ハートに線を引いた図」というような説明に近かったのではないでしょうか。では、どうすれば伝わったのでしょうか。
まずは説明力とは何かを理解する必要があります。説明力とは次の式で表されます。
“説明力”=(厳密性)×(国語力)+(その他)
(厳密性)と(国語力)がかけ算なのがポイント。どちらかが0ではいけません。
(その他)については無数の要素でできていますので、代表的なものだけご説明します。
一度にたくさんの言葉が出てきましたので、少しずつ見ていきましょう。
厳密…誤りが無いよう、細かいところまで厳しく目を行き届かせ、隙が無いこと。
国語力…ここでは、語彙力や文章を作る力を指します。
語彙力…ボキャブラリーと言ったほうが伝わるかもしれません。ここでは、言葉をどれだけ知っているかと解釈してください。
○(厳密性)×(国語力)について
これは具体的な例から見ていきましょう。
私のまわりの方や生徒数人に「ハートに線を引いた図」を描いてもらいました。その中の一部の結果を使って、伝わらなかった理由やどうすれば良かったのかを説明します。以下の①~⑧の結果が得られました。
驚くことに、最初に示した図と同じ図を描いた人はいませんでした。色んな人が色んな図を描いています。なぜこのような結果になってしまったのか。それは、説明が厳密でなかったことが一番の理由です。“線”という言葉に着目してみましょう。
①~④,⑦は直線が引かれていることがわかりますね。対して、⑤,⑥は曲線、⑧はジグザグした線です。説明するときに単に線と言っただけでは、どんな線なのか分からないので、“線>”→ “直線”と直すべきでしたね!
次に、①~④は一本の直線が引かれています。対して⑥,⑦は二本(複数)の直線が引かれています。「ハートに線を引いた図」には線を何本引くか書かれていないので“一本の”という言葉を付け足すべきです!
“一本の直線”ではまだまだ不十分です。①~③よりも、最初に示した図に最も近い④のように線を引きたいですよね。ここで“水平に”という言葉が付け足せると良いですね!“横向きに”でも良いでしょう!
説明文は「ハートに一本の直線を水平に引いた図」となりました。残す問題は、どこに,どのような線を引くのか、です。ここから厳密性と国語力が同時に試されます。不適な例を示しながら見ていきましょう。
“ハートの下の方に”直線が来てほしいですよね。しかし“ハートの下の方に”だけでは、描いてほしい図も含めて次の場合が考えられます。
A,Bは直線がハートの下の先の部分から離れていることが問題ですね。CやDのようになるには“ハートの下の部分に接している”ことが必要です。さらにC,Dは直線が短かったり長かったりしています。これをなくすために“図が左右対称になるように”と付け加えれば良いですね。このように、誤っている場合を隙なく考えられる厳密性>、“接する”や“左右対称”と表現できる国語力が要求されます。
ここまでの文章を整理しましょう。
「ハートに一本の直線を水平に引いた図」
“ハートの下の部分に接している”,“図が左右対称になるように”
それでは、これらのキーワードを違和感なくつなげてみましょう。意外に難しいと思います。以上のことから説明文の一例は次のようになります。
「一つのハートの、下の部分に接する一本の直線を、図が左右対称になるよう水平に引いてください。」
どうでしょうか。この説明から初めに示した図以外のものはありますでしょうか。“一つのハート”としたのは、“<strong>ハート”だけでは次のような誤りが考えられるからです。“一つの”がなければ正しい図になりませんよね。
ここまで考えると、「ひねくれすぎ」と思われるかもしれませんが(笑)。
○(その他)
(その他)は、説明をよりわかりやすくするための追加要素ですので、何をするも自由です。代表的なものとして、(図を使って説明)があります。
身も蓋もないことを言いますが、初めの図と同じものを描いて欲しいのならば、それを見せながら「これ描いてください」で終わりです。文章による説明が難しい場合は、図を描くことで格段に説明しやすくなることが多いです。みなさんも普段、自然に使っていることかと思います。プレゼンなどがそれにあたりますね。文章だけの資料は嫌ですよね。
長くなりましたが、説明力の意味は伝わりましたでしょうか。
本題は、この説明力を子どもに身に付けさせるためにどのようにすれば良いかでした。これも、前回と同様に日常生活での接し方で身についていきます。
例えば子どもが、口ごもっているとき、何か言いたそうなとき、気持ちを表現するとき、宿題でわからないところを聞いてきたとき・・・様々なシチュエーションがあります。次のような関わり方をしてきた人も多いのではないでしょうか?
(高校生)「なんかさ、ボールがヒューンて来てゴーンてなったからウーってなったから保健室に行ってたの。」
大人「ボールが頭に当たって怪我したから保健室にいたのね。」
(高校生)「うん、そういうこと。」
高校生でこのような説明をする子は、今まで
数多くの説明力を養う機会を失ってきたことでしょう。
前回の「自分で考えること」とよく似ていて、「自分で説明すること」をあまり経験しなかった子どもの言語能力は高くありません。
ですから、子どもと接するときに大切にしていきたいことがあります。
子どもが何かを伝えたいとき、大人が子どもの言いたいことを先読みして代わりに発言してはいけない。
子どもにとっての「助け」とは、言葉のヒントを与えられること。
子どもの自発的な発言が出るまで耐えること。
です。
子どもが何かを説明するとき、子どもの言いたいことを汲み取り、理解してあげられることは大切です。しかし、大人が理解して終わっては子どもの成長はありません。子どもに「何?」「どこに?」などと問い返し、説明させるような関わり合いをしなければ説明力は養われません。
小学生の例では、
子ども「(カブトムシの闘いを見て)カブトムシがね、すごくガンガンしてた!」
大人「すごくガンガンってどういうこと?(<strong>闘うという言葉を使わせたい)」
子ども「えっとね、ツノをね、こうやってね…」
大人「仲良しだったのかな?(あえて間違えた解釈をし、ヒントにする)」
子ども「違うよ!ケンカ?闘ってた!」
このように子どもの考えていることは子どもの口から発言させることが望ましいです。
自発的に発言させることが大切ですから、
高校生の説明力の向上は多くの会話があってこそ成立します。
(高校生)「なんかさ、ボールがヒューンて来てゴーンてなったからウーってなったから保健室に行ってたの。」
このような発言に対しては、まず明るく、にこやかな感じで(叱責しない)
大人「ヒューンとかゴーンじゃわからんからちゃんと詳しく説明(厳密性)して!あと、“~から,~から”って連続で使わないの(国語力)!」
などと言ってあげることが大切です。その後の会話でも同じように、文章や言葉のおかしな所を注意し、子ども自らの口で説明させてあげてください。
高校生であれば、ある程度の言語を使いこなし、文章を構成する力を養わなければ、数学だけでなく他教科全てに影響が出てくることでしょう。加えて、小論文や大学入学後のレポートに悪戦苦闘し、卒業論文にも響いてきます。このお話はまた別の機会にするかもしれませんね。
本日のお話しは非常に長かったので要点だけまとめて終わりとします。ここまで長いお話を読んでくださり、ありがとうございました。
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